「市立函館博物館友の会令和7年度7月例会」を7月20日(日)に実施しました

7月の例会では、市立函館博物館で開催されている企画展「知られざるオホーツク海先史文化紀行」の見学会を行いました。参加者は7名でした。企画展の内容は、同館が所蔵する、旧石器時代から鎌倉時代初期の、北海道や南樺太などのオホーツク海沿岸で使用されていた土器や骨角器、石器など約1150点を展示されています。参加者の感想をご紹介します。
縄文遺跡に関心がある会員さんは、「オホーツク文化の遺跡に興味があったが、一度も見た事が無かったので非常に楽しみにしていました。特にモヨロ貝塚の展示資料については縄文、続縄文、擦文、オホーツク文化の一連の流れの自分の中の疑問点が福田学芸員の分かりやすい説明を聞いて理解できるとともに新たに知りたい、どうしてだろうと疑問興味も増してきたところです」とのさらなる先史時代への興味の広がりをもたれたようです。
歴史研究をされている会員さんは、「個々の展示物のキャプション不明点は、福田学芸員の丁寧な解説や見学者からの質問や的確な指摘で解消。博物館や美術館は一人で見学することが多いが、見知らぬ隣の見学者が発した言葉に刺激され理解を深めることがままある。見学会の楽しさ面白さや意義を改めて実感させられた」と双方向性の対話が見学の質を上げることの大切さを示唆されていました。
父親が北洋漁業に関連した会社に勤務していた会員は、「父親がオホーツクの網走で缶詰会社を経営していたので、子どもの頃は夏休みに何度も網走へ行っていた。網走郷土博物館にも何度か足を運び、米村さんから色々説明も聞かせて貰った。そして昭和44年に『モヨロ貝塚』と題する書籍を出版し、『吹雪ふき荒れる冬の夜、オホーツクの流氷が岸を嚙む音を聞きながら土器にハケをかけるとき、これこそが私だけに許された考古学の醍醐味』とこの書籍の冒頭に著者の言葉としてつづっている。この企画展で、昔行ったことのあるモヨロ貝塚と米村さんの事が鮮明に思いだされた」とモヨロ貝塚の研究に一生を費やした米村さんとの思い出を想起していました。
このように企画展自体の物語とともに見学者の様々な物語を知ることができますね。筆者がこの企画展での印象は、ある研究者の「函館でもこの優れたコレクションを公開しては」という言葉から展示公開の準備が始まったことの大切さです。当博物館の特性の一つとして行政域を超えたコレクションを収蔵していることです。そのために研究領域も多様性に富み学芸員が対応するのに苦慮しているのが実情だと思います。今回、東京大学大学院の福田正宏教授(考古学)の協力もあったと聞いています。これからの博物館の研究の方向性として地元の研究者と協力するとともに大学などの研究者との共同研究が大切だと感じました。
最後に、今回の展示資料の収集者は馬場脩、児玉作左衛門などの戦前の研究者です。グローバルヒストリーを実践している優れた視点と熱情に対して敬意を持つともにそれらを継承することも博物館の役割なのかなと思いました。
