「市立函館博物館友の会」アカデミア
市立函館博物館友の会のこれからの大切な役割のひとつが、将来の建設が想定されている新・博物館構想についての支援です。これらの実践が市民参画できるプラットフォームになれるよう頑張ります。皆さまのご意見をお願いいたします。
博物館構想についての経緯
2022年に函館市教育委員会より「(仮称)総合ミュージアムの整備にあたっての基本的な考え方(たたき台)」は提示されました。このたたき台を基礎にパブリックコメントとともに関連する市民団体との意見交換がもたれました。
教育委員会は当初、たたき台にこれらの意見を含んだ基本的な考え方を作成する予定でした。市民の意見の多さと多様性により再度話し合いを持つことが予定されています。
博物館の最近の動向
文部科学省の文化審議会の答申(2018)によると博物館等の文化施設は、「教育機関・福祉機関・医療機関等の関係団体と連携してさまざまな社会的課題を解決する場としてその役割を果たすことが求められている」ことや、OECD(経済協力開発機構)とICOM(国際博物館会議)が2019年に地方政府に向けて、「文化的価値の保存と創造だけでなくミュージアムの社会的便益、観光や経済、産業への波及効果の大きさを十分に認識し、積極的な支援や投資を行うべき」と提言しています。
世界遺産と博物館の共通性
「世界遺産の推薦・登録・保護は例えば専門家や行政といった限られた人のみで進められるものではない。地域住民や企業、学校、NPOなどの団体といったコミュニティが巧く参画して、みんなの歴史を紡ぎ、そして世界遺産の恩恵をみんなが享受するという姿が望まれる。」(佐藤信編『世界遺産の日本史』2022 p029 ちくま新書)とあるように文化行政の担い手についても多様性が求められています。つまり、これからの博物館は、行政主導で担うのではなく市民ミュージアムとしての市民の参画が求められています。
博物館構想の難題
グローバル社会の問題と私たちの市民生活とは深く関わっています。温暖化による環境異変やマイクロプラスチックによる環境汚染などです。加害者と被害者が複層化しています。これらの社会の変化とともに博物館の役割も変わっています。大きくはSDGsを無視することはできませんし、過去の称賛より現在とどう向き合うかが問われています。つまりこれまでの博物館の難題を克服しながら新しい博物館のイメージを構築することが求められています。以下に具体的な難題の一部を提示しました。
- これまでの博物館は、国立・県立・市町村立が博物館法による同じ考え方で設立・運営されてきました。建築面積・職員数・予算額などでの違いがあるのに同じイメージに準拠した傾向があり行政の画一化がみられました。地域博物館とはどのような博物館かが難題です。
- これまでの博物館の研究領域は、考古・歴史・民俗・民族・美術・文学・植物・動物・魚類・地形・地質・産業などの学問領域を、地域にあっても中央の学会に準拠してきました。難題①と関連しますが研究領域ごとの専門職を採用することは難しいです。地域学をどのように捉えるかが地域博物館における難題です。
- これまでの博物館の調査・研究の担い手は学芸員でした。一部の博物館では学芸員と市民が共同研究をしています。難題②にあるように学芸員だけでは調査・研究は進展しません。大学や市民研究家との連携が求められています。多くの個別的な市民による研究団体の組織化とともに博物館との協働関係が難題です。